前置き
マラウイはアフリカの東部に位置する内陸国。
小さな国で、国土の三割を巨大なマラウイ湖が占める、「アフリカの温かい心 warm heart of Africa」とも呼ばれる。
そんな国に去年大学のプロジェクトで六週間滞在。そこで会った人たちに惹かれ、今回は自分一人で、教育プロジェクトを去年知り合ったマラウイ人の大学生と進めるために帰ってきた!
緊張で迎える小学校の活動一日目
朝5:20に自然にぱっちり起きてしまう。
今日が、初めてTIWACTとして小学校に赴く日。
昨日は夜9時までジェームスの事務所で会議し、夜中2時までスケジュールを書いて、そしてさすがに眠らなきゃと、急いで眠る。わずか3時間の睡眠だったけれど、緊張からなのか、全くもう一度眠れる気がしない。
集合は7時。ならば、起きてもよし!
そんなわけで、起きて、事前に作っておいたポトフを温めて、食べて、化粧して、TIWACTのTシャツを初めて着る!私がデザインしたロゴ、それをマラウイの布を使ってTシャツに縫い付けたのだ。
鏡を見て、気合を入れる。昨日は、メンバーにそのTシャツを配ったのだが、それぞれ帰宅するなりメンバーが着て「最高!」と自撮りを送っていたことを思い出して少し笑う。
みんながいるから、どうにかなる。
もう、緊張してるけれど、こう思うと少し落ち着く。そして楽しみが増える!
バタバタと家を出て、そして自転車タクシーに乗る。そしていつも通りニケツでジェームスの事務所へ。七時五分前につくが、誰もいない、、、。いつもの二人のメンツは、遅く来るだろうと、なんだか悪い予感がする。
でも、ジェームスの同僚でサポートしてくれるミシェックが、十分遅れでやってきた。早速、スケジュールとプロジェクトの効果を見るテストを印刷すべく、コピー屋さんに行く。町の小さなコピー屋さんで、スタッフと私たちも一緒に300枚のテストをホチキス止めしていたところ、ようやくいつものメンツからもうすぐ着くと連絡がくる。
一時間遅れ!!
「八時に受け付け始めると言っていたのに、八時にお前らが来てどうするんだあ!!!!!!もう~~~!!!!お前ら~~~!!!!」」
と軽くパンチしながら怒るが、ミシェックがゆったり私をサポートして、「緊張しなくていい」と傍らで言っていたからあんまり怒る気もしない。もう笑ってしまう。ミシェックにはなんだか人を穏やかにさせるパワーが全身から発せられているのだ。本当に頼りになる。
とにかくいつもの二人を小学校で小学生たちの名前と人数とグループ分け、そして本の運搬を頼む。そこは「了解」と力強い返事。
私はテストを運搬するためコピー屋さんに戻る。ミシェックが私に、「ここらで、僕とジェームスに悪いことをするやつはいないんだよ」と話す。確かに、みんな二人にはすごい挨拶をする。それは、彼らが長年この地域で児童に関わる案件を広く携わっていて、ソーシャルワーカーや、警察とも一緒に協力してきたからだという。彼らのその地域に根ざす活動の力は普段見えないけれど、人と人の関わり方を見ると、いつも彼らは住民から「おじさーん!」と子どもたちに声をかけられ、高校生たちもひっきりなしで事務所に彼らに相談しにくる所を見て感じる。「ジェームスと活動している」というだけで、この地域では「あ、あの有名なジェームスね!」と通じてしまうのだ。「だから、君は安心だね!」とミシェックが私にいう。確かに、本当に二人の隣にいるとなんだか町が優しく見える。
そうして私たちが学校に着くと、すごい勢いでブレッシングと、ジェームスが声をかけて集めた地域のボランティアのメンバーが小学生たちをさばいて、名前を記録している。ミシェックがそこに加わり、手際よく駆け回っている子供たちを10人で輪っかをつくらせ、グループ分けをしていく。私も見習ってグループを作る。
グループを作り終わった後、ブレッシングと話し合う。時間はすでに九時近く。でも、ジェームスは町に今日の材料を買い出しに行ったまままだ帰ってきていない。とにかく、子どもたちを今いるメンバー7人で一人1グループを担当するよう分けて、結局6部屋教室をしようすることにする。子どもたちを移動させ、そして私たちみなで子どもたちに一部屋ずつ回り、自己紹介をする。
ジェームスと活動をしているメンツだけあって、みんな子どもたちの扱いが上手。すぐに反応を子どもたちから引き出して、笑いを引き出す。ブレッシングが自己紹介の司会と活動の概要を伝える。私は後ろからみんなについていけばいいだけ!本当にみんなすごいな、と今回急遽加わってくれたプロジェクトの相談をいつもしている台湾人の友人に話す。この友人はマラウイで知り合った、今博士課程を台湾で受けながら、研究をマラウイでしている少し変わった、明るい子!
こうして自己紹介し、その後私たち運営側は急遽ミーティング。まだ、卒業生がいない。そしてジェームスもいない。ならば、テストと自己紹介から始めようと決める。それぞれ教室に行って、英語で今度は生徒に自己紹介をしてもらうのだ。目的は、何人の生徒が英語で自己紹介できるのか、何人が部族の言葉と混ぜ合わせるのか調べるためだ。
私は、アーティストでジェームスの活動のメンバービリトン(詳しくはこちら⇒マラウイ:アーティストの彼が夢見る物語)と一緒にペアになって一つの教室に行く。
そんな時、「れな!!」と声がかかる。
振り返ると、もう一人ずっとプロジェクトの相談に乗ってくれているジャネット(詳しくはこちら⇒マラウイ:情熱的な教育の働き人)がいる!!
看護師の彼女は平日休日両方仕事が忙しいのに、どうしたか聞くと、「仕事あまりなかったから、患者さんが入ったときに電話をかけてもらうように言って、来ちゃった!」と話す。もう嬉しくて、歓声を上げてしまう。
そんな訳で彼女も私のグループに加わってもらう。ビリトンと、ジャネットと一緒にできるというのは私の最大の安心材料!二人がいるだけで、緊張が溶けて自分が楽しむ気満々になっていることに気づく。三人で、テストを監督し、いくつか生徒たちに問題のとらえ方に問題はあったけれど、ジャネットがすぐに気づき、ビリトンが補足の説明を子どもたちにし、私は補佐、そうしてテストは無事終了。
自己紹介も全員英語でなんなく話せて、順調に終える。
そんな時、教室の入口からまた「れな~!」と呼ばれる。
振り返ると、いつも家に招いてプロジェクトの相談に乗ってくれる小学校の先生がそこにいる!今日は、娘が体調が悪いからいけないと言っていたのに、「旦那から、せっかくだから少しだけでも見てきなよと言われてね、来たの。私の生徒でもあるしね!」と娘を抱えながらいう。
本当に嬉しい。少し話して、彼女は生徒たちを入口から見守り、そっと教室を後にする。
そしてようやくジェームスが帰ってくる!
早速、生徒を連れてウォームアップを外で行う。
約300人の生徒がグラウンドに大集合。ジェームスとジェームスの活動のメンバーが歌と踊りで盛り上げる。
そして再びみんなそれぞれの教室に戻る。これから、招いた卒業生たちの人生を話すための活動を始める!
今回は、みんな「将来の自分」というテーマで絵を書いてもらう。書いた後、みんなに何を描いたか語ってもらう。でも、ここで校長先生に呼び止められてしまう。
校長そんな事言わないで。理解できないよ。逃げたい。
「勉強する時間なのに、踊ったり、歌ったりとはどういうことか」
「制服を着ていないのは、人として乱れているということ」
「ボランティアの中で、身だしなみが整っていないひとがいる。そんな人は子どもたちに悪影響を与える。誰を連れ込むのか、しっかり考えろ」
私にとっては「一体何を言っているの?」と全く同意できる点がなく、困惑するばかり。
踊ったり、歌うのはまず子どもたちと卒業生たちの壁をなくすため。
制服を着ていなくても、私たちのモチベーションを上げる目標を妨げるものにはならない。
そして、私はボランティアのなかで一人も悪影響を与える人を誘った覚えは一切ない。信頼している人しか誘っていない。それはある意味私への侮辱でもある。そう感じて、もう開いた口がふさがらない。
反撃するか、へりくだるか。
私はとにかく早く、ビリトンとジャネットのもとに行って、生徒たちがどんな絵を描くのか、二人がどんな絵を描くのか気になって仕方がない。
そこで、私は受け流すことにした。
「うん、うん、はい。サポート本当にありがとうございます。意見を取り入れて考えます。」
ひとしきり説教を聞いた後、実質聞き流した後、ミシェックを校長のもとに残し、一人逃げてします。校長のサポートがなければ、学校が使えない。生徒たちを誘う事もできない。だから、校長との関係は良好に保つしかない。理不尽だったとしても、それは仕方がない。そう思って、とにかく、教室に戻る。
「将来の自分」を小学生たちと描く
教室にもどるとすでに子どもたちが絵を描き始めている。
私も混じってみんなで描く。
みんなの書いてる姿になごむ。ビリトンとジャネットとお互いの絵をからかいながら、子どもたちと話しながら絵を描く。
私にとって本当に至福のひと時。
そして終わった後、みんなで輪になって、一人ずつ話す。
男の子は兵士、女の子は看護師、そんなパターンが見えて驚く。「なぜ?」と聞くと、「国を守るため」、「ケガした人を助けるため」と言ったような天使のような答えが返ってくる。
でも、単一の様子には少し驚く。他に何人かいたのは、法律の裁判官、サッカー選手など。
マラウイの卒業生が子供たちに語る「将来」
そして二人にも絵を介して将来の話を話してもらう。
ジャネットが、「私は看護師だけど、看護師だけじゃないのよ。私は公衆衛生の学校にその後行って、今は地域でも活動しているの」と、病院だけでない、公衆衛生の話を子どもたちにする。
ビリトンは、アーティストになって、いろんな人の物語や、マラウイの話を絵を通して伝えたい、誰かに頭の中で考えたことを絵を通して伝えたいと話す。
二人の全く違う、二人だけにしかできない話を聞くのは、私にとっても刺激になるけれど、それを見る子どもたちに一体どう響くのだろうかと想像すると、楽しみが増える。
最後に一言二人にもらう。
ジャネットが話す。
「今、小学校の時点で将来なる自分が分かるわけではない。私はもともと看護師に小さいころからなりたかったわけではないよ。でも、今みんなが話した未来の方向に歩んでいくことが大切なんだと思う。今日、みんなが紙に描いた目標や、夢は、前に進んでいく力になるものだから。それが教育を通してかなう人もいるし、違うものに力を入れる子もいると思う」
ビリトンが付け足す
「学業だけではない。学業以外に歩みたいものがあるかもしれない。僕はアーティストだけれど、それを専門にして生きている。好きな事をする。それは抽象的に今は感じるかもしれないけれど、自分に才能があるのなら、好きなことがあるなら、それを少しずつ学業の傍ら養っていけばいい。好きなことをして生きなさい。大学に受からなくても、その後人生は続いていく。自分を信じてね。」
二人の言葉に教室は7年生の温かい拍手が響く。
うつむいている子どもたちもいたけれど、何人かは興味津々といった具合にうなずいている。
校長は、理想的なロールモデルにある縛りをもっている。それは校長の育ってきた時代も関係しているだろう。これほどストイックにしてきたからこそ、この小学校で中等教育への進学率を一気に上げることができたのだろう。でも、子どもたちの周りにはロールモデルが欠けているというより、単純にいろんな価値観に触れる機会が欠けているのかもしれない。ジャネットが自己紹介したときの子どもたちの反応を思い出す。
「病院で働いている」というジャネットに、「看護師でしょ」と子どもたちがいう。ジャネットがなんで医師じゃなくて看護師だと思うのかと聞くと、「女性だから」、「それが一番ふさわしいから」と子どもたちが答える。ジャネットはそれから、「なんでそう思うの?」とさらに聞く。そうして女性でも男性でも医師になれる事を質問を介して伝えたのだった。
だから、私たちがまた違う価値観を持つ人たちを連れてきて、もっといろんな未来を子供たちが自由に描くことができるようできたらいいな、と願いが強まる。
「僕たちは僕たちでやっていくんだ。」救われる言葉
そして二時。ようやくご飯を食べる。
地域のお母さんたちに頼んでご飯を作ってもらっていたのだ。
おいしい豆と、野菜と、ご飯!
子どもたちはおなかペコペコ。これは完璧な私たちのタイムマネージメントの失敗。次はもっとうまくするからね!と心の中でいう。
でも、本当に充実した日。
ジャネットはちょうど病院に呼ばれ、私に「またね!!」と行って、ご飯も食べず別れる。
私は子どもたちにご飯がよそわれるの見ているところをミシェックに呼び止められる。
「れな、言ってやったよ」
私が訳が分からず、首を傾げていると、
「校長先生に!」
と付け足す。
ミシェックは「さっきはレナにあまりにひどい言い分だった」といい、「とにかくレナはそれに傷つく必要はないから。僕が、それはあり得ないと言い返してやった!僕と彼は長年の友人なんだけどね、妹がいじめらていたらほっとけないじゃないか!」と私に笑いながら話す。「レナがそれで、自信をなくしたり、方向を変える必要はない。これはとてもいい活動だから。僕たちは僕たちでやっていくんだ。」そうして、笑顔で私の目を心配するなというように見る。
思わず「ミシェック~~!」と抱きついてしまう。
私は、不合理だと思いながら、校長にたてつくことはできなかった。私のメンバーが傷つけられたのに、「うんうん」としかうなずかなかった。踏ん張るところ、私は分からず放ってしまったが、ミシェックが立ってくれた。それは私にとって泣くほど嬉しいこと。校長に何を言われても、「あっそ」としか思わなかったけれど、それを真剣に受け止めても、どうしようもできないと思っていたけれど、ミシェックがこんな風に私をかばってくれて、気を使ってくれる事に、その事が私に響く。そしてようやく校長が不条理だったのかもしれない、と私の中でさっきの違和感が消化しはじめる。私はチームをもっと信じて行動していかなきゃと思う。私こそが自分たちの事を信じて、守れなくてどうするんだ。ミシェックは本当に私の鏡である。
課題の山、真正面切って迎えられるのは彼らがいるから
最後にメンバーで会議する。フィードバックで、最大の課題は時間の管理という事になり、でも全体として内容はとてもいいと、PTAの長も、先生も、卒業生からも後押しをもらえた。最後の最後、ビリトンが「みんな裏で話すのに、ここでは誰も言いださなかったから、言おうと思う。交通費はどうするのか、団体が出すの?」と聞く。
そこでハッとする。
そこをしっかり話していなかった。ビリトンが「こんなことを聞くなよ、と僕を見ている人もいるけれど、これは話さないといけないかなと思って。裏でこんなことを誰かが話しているのは聞きたくないから」と続ける。
私は予算が限られてる。少ない予算なのだ。
Tシャツを全員に配れないほど。
でも、あまりにみんなのボランティア精神に甘えていたのかもしれない。
とにかくビリトンが切り出してくれたことに感謝する。それは、はっきり私たちが話さないといけないことだったこと、そして汚い役をビリトン一人にかましてしまったことを申し訳なく思う。私は、限られた予算であること、でも交通費はぜひ出したいと思うと話す。
でも、頭は回っていない。
交通費はもともとの予算に入れていない。
どうしよう。でも、少し自腹で払うのは仕方ないのかもしれない。冬休み働いて、その分このマラウイに回せばいいか。私はこのチームは投資する必要がある、その価値がある。今日さらに確信を持ってそう感じる。
そこで会は解散。すでに四時。
メンバーだけで会議室に戻って会議する。まずジェームスから始める。言うことは、、
「れな、校長の事は気にするな。もともと校長は理念に賛同したというより、お金がほしかっただけなのかもしれない」と話す。そして~の事もあった、~の事もあったと、校長先生のいつでも私たちの活動に賛同していたわけでなかったこと、だから、これは今に始まったことではなくて、そしてレナのせいではないことをはっきりと言い切る。「だから、れなここで挫いてはいけない。こんな事で挫けないで、絶対に。そんな事で心を撃ち抜かれないで!」と私に真剣な目をして話す。
ブレッシングとビクターが「もう、本当だよ」と真剣に私を見てうなずきながら言う。
ようやく、なんだかさっきの校長先生の言葉が私の中でも受け入れる体制ができてきた。どうやら、さっきは私は傷つく事が怖くて、その件を精神的に本能的にブロックしていたのかもしれない。でも、今は私が校長の事で悲しむというより、みんなが怒って私をかばってくれるから、私は校長の事で真剣に悲しんでいない。客観的に消化できる。
このチームがいる、それが私のなによりも財産。
ここにいれば、私は守られている
そんな時、私の携帯が鳴る。ジャネットからだ。
「今まだ学校?迎えに行ってあげる」
なんと仕事帰りに私を家に送ってあげるため寄ってくれるのだという。「大丈夫、大丈夫!」というが、「いや、迎えに行くから」という一言に押され、学校から徒歩十分のジェームスの事務所を教える。
会議の部屋にジャネットも到着する。みんなもジャネットに挨拶する。ジャネットからいただいた意見はいつもチームに告げているから、みんなもジャネットの事をもともと知っているし、なんといっても今日イベントに参加してくれたから、話したこともある。
ジェームスがジャネットに「じゃ、妹をよろしく」と笑いながら言い、ジャネットが「そうね、レナ疲れてそうだしね!じゃ、行こうか!」と返す。
チームが玄関まで送ってくれる。すると車からジャネットの夫のフランクも出てくる!フランクが「今日いいイベントだったと聞いたよ!」と私にいう。チームにフランクも紹介し、フランクが「これがあの有名なジェームスか」と言ってみんなを笑わせる。「次回は、僕も駆けつけるから!本当は今日行くはずだったんだけど、やっぱり仕事で呼び出されちゃって」と話す。そして車に乗り込むと、ブレッシングが「家に着いたら連絡しろよ」と言う。
なんだか、ほんわかする。
小学校に親が迎えにきてくれたようなそんな感覚。みんなに守られている感覚。目じりが少し緩む。
そうした訳で、私は先に会議を後にする。みんなも疲れているだろうに。ここは、お言葉に甘えて先に行く。車でフランクとジャネットと今日の話をして、興奮を共有して、二人の仕事の話も聞いて、あっという間に寮につく。名残惜しいけれど、寮の玄関でおろしてもらう。ジャネットが、「来週は暇だから会いましょう!」といい、最後ハグして別れる。
帰るといつもの日常。
疲れたからインスタント麺に野菜炒めをのっけて食べる。
いや、たべようとした瞬間ビリトンから連絡がくる。「電話できる?」
だから、電話をかける。
何かあったのかな、やっぱり校長先生の言葉に傷ついたのではないか、交通費の話の事を切り出したことを気にしているのかな、といろんな考えが浮かんだけれど、いつも通りの声色で「今日どうだった?」と聞かれるから、本当にみんながいて幸せだった事を話す。たくさん学びがあった事も話す。
でもやっぱり私が一番気になっているのは、校長の話。
後から知ったのは、校長がだらしないと言ったボランティアがビリトンの事だったのだ。それは腹が立つ。腹が立つ以前に、校長と私は価値観が違うんだけど、でも理解できない。
そうビリトンに話すと、
「いや、大丈夫だから!確かに悲しかったし、帰るべきかもしれないとも思ったけれど、チームが好きだし、ここにいるから残ると決めたんだ」と話す。
絶対ショックだったのに、私は前を切ってこの事について校長に何も言っていない。「本当にごめん、そこは私が立つべきだった」と話すと、「れなが謝らないで!!僕は大丈夫だから!」と笑いながら言う。「校長、今日は機嫌が悪かったし、誰かに当たりたかっただけだと思う」とさらにいう。彼と話していると、絶対に誰かの悪口を言い合う泥沼にはまることはない。それは、私にとってなによりもありがたい。
「今日は本当に楽しかったよ。本当に良かったよ」
と話してくれる。楽しさを共有できた、それはもっと大きな嬉しさになって帰ってくる。思わず笑顔になっちゃう。
「そして、交通費の話だけれど、それが討論のいい終わりを変えてしまってごめん 」と言う。「でもそれは穢れ役をあなたが買ってくれただけ。私が本当はいうべきだったんだ」と話す。でも彼が続けて言う。「れな、交通費は出せなかったら、その出せない状況を話したらいいんだよ。自分のポッケから出したり、無理したりしないで。それでついてこないやつはついてこないし、ついてくる人はついてくる。誠実な人はいるさ!」
そう話すから、「ふーん、じゃ誠実についてきてくれるの?」と聞くと、「いや、僕は誠実な方の人ではないかも」と言うから怒ってやる。でも、それは信頼しているからこそできるくだりであるってことはお互いしっている。それが心地いい。
「とにかく、れなそんな心配しないで!!校長の事もいろいろあるだろうけれど、そんなことを心配することではないから!僕は最高に楽しかったよ」
そうして少しばかり話して、電話を切る。そう、きっと彼が言いたかったのは、最後の部分の所なのだろう。
We are all oneの先に見える自分の未来
今日起こったこと、気になったこと、私の気持ちを少し曇らせたこと、それがこのチームでいると晴れる。電話して心がほぐれて、泣きそうになる。このチームで一緒にいると、なんか大丈夫なような気がする。
ジェームスの口癖” We are all one”、それが聞こえてきそう。
彼らとなんとか続けたい。
教授は3P、People, Passion, Persistenceと言った。
私はどうやら人に恵まれているようだ。本当に恵まれている。
つまり、後は私の情熱と、これを継続していく忍耐力にかかっているという事なのか。
ああ、もう絶対に続けたい!このメンツで回していきたい。
そしてこのメンツを取り囲む、また最高のメンツを巻き込んで、もっといろんな小学生に、もっといろんな可能性を見せることができたら。いや、私たちは見せていくよ。待っててね。もう少し力を蓄えるね。
遠くない未来、もっと多くの台湾の学生、日本の学生も呼んで、この感動を共有できたらいいな。