偶然の出会いは終わらない、不思議な島馬祖
けたたましい目覚ましの音に、目が覚める。
朝八時半。よっちゃんは隣で眠そうにしている。
チョウおじさんは私たちが起きた時間に迎えに来てくれる事になっていた。二人で目をこすりながら、よっちゃんがチョウおじさんに起きて今から準備すると伝える。すると、すぐ返信が返ってくる。「今起きたでしょ?女の子は時間がかかるから、ゆっくりおいで」と。さすが、娘を育て上げただけあって、お見通しである。
それでも私たちは20分程で支度を終え、連絡する。隣のセブンにいるからと言われ、向かうと、そこに朝ごはんを食べているチョウおじさんが。私たちもそこで麺を買い、隣で食べ始める。すると、
「れな~~!!!!」
といきなり聞きなれた声が私を呼ぶ。振り返ると、なんと社会学部の同級生三人がそこに!!どうやら彼らと他8人ほどで一緒に旅行に来ていたらしく、私たちと同じ所に泊まっていたという!昨日確かに、宿のオーナーに「台湾大学の生徒が来ているわよ」と言われたが、三万近くいる学生の中で、自分の友人である確率はないと思い、そうなんですかと流していたのだが、どうやらそれは私の同級生たちだったらしい。
びっくりしすぎて、慌ててよっちゃんとチョウおじさんに紹介する。話しておいでと言われ、少し話し記念写真を取り、急いで外で待っているよっちゃんたちのもとに戻る。島で彼らに会うなんて不思議なもの。チョウおじさんがよっちゃんに宿の隣の伝統的な建築物の説明をしているのを途中から聞く。
屋根が帽子みたいになっているのは、その村を管理している家の証であるといい、中まで案内してくれる。
歴史を知り、建物の中を歩き、それから今度はチョウおじさんの車に乗り込む。
鹿がいる 大坵島に向かうのだ!途中、鹿が好きだという桑の葉を刈り、昨日釣りをした岬に行く。そこにはチョウおじさんの友人の船乗りがおり、すでに私たちを待っている。船に乗り込み、海を渡ること5分程!島に上陸。
桑の葉を抱えながら、チョウおじさんの後をついて、私たちは坂を上る。すると途中で、チョウおじさんの友人のグッズを売るおばさんに会う。私たち二人がいるのを見て、「あれ?このかわいい二人は?」と聞く。「お客さんだよ」と言いながら私たちをおばさんに紹介する。去り際、おばさんが「騙されないようにね~!」と私たちにいう、笑いながら三人で再び坂を上り始めると、今度は坂の上から声をかけられる。見上げると、昨日バーで知り合ったお兄さんの一人がツアーをガイドしている!またバーでね、といいまた彼とも別れる。
坂を登りきるとそこにお寺が。
三人で挨拶してから、いよいよ短い木たちの森に踏み込む。すると早速鹿が近づいてくる!桑をおいしそうに食べ、ものの10分で私たちが刈ってきた桑を食べ終える。するとチョウおじさんが木登りをし始め、再び私たちにまた葉をくれる。そうしてそれも鹿たちに与え終え、私たちは再び前に進み始める。視界が開けたと思ったら、私もよっちゃんも思わず歓声をあげてしまう緑の芝と海と、白いどこまでも続きそうな小道が。
先まで小道をたどると、休憩所がそこに。そこでチョウおじさんが持ってきてくれたアメリカンチェリーを一緒に食べる。「友達が送ってくれて、僕一人じゃ食べきれないから、君たちと食べようと思って」とおじさんは私たちにもっと食べるよう勧めながらいう。
絶景を眺めながら、サクランボを食べ、チョウおじさんがどの島がなんという島か教えてくれる。食べ終えたころ、「よし!帰るぞ!太陽に焦げてしまうからね!」というチョウおじさんの掛け声で私たちは再びもと来た道を戻る。チョウおじさんの友人の船も私たちの事を待ってくれていて、乗り込み再び海を渡る。海を渡りながら、なんだか私とよっちゃんだけでなくチョウおじさんも一緒に一緒に写真を撮りたいなと思い、声をかけて三人で写真を撮る。
あっという間に北竿に戻り、私たちはそこから「熱いからやっぱり昼ごはんの前にかき氷食べに行こう!!」と、町のかき氷屋さんへ。
冷たい氷に、ゆでたての馬祖特別の甘い餡が入った餃子に、たっぷり黒糖がかかったかき氷を食べる。炎天下を歩いた後のかき氷は体にしみる!!他のお客さんと時折話しながら、あっという間に食べてしまう。
それからチョウおじさんおすすめの汁なし麺を食べに行く。お店は閉まりかけていたけれど、チョウおじさんだから仕方ないわねとおばさんが注文を受けてくれる。チョウおじさんはお茶を買ってくる。甘いものはあまり得意じゃないから、たくさん飲まないといけないんだよという。かき氷は私たちにどうしても食べてほしかったら、連れて行ってくれたのかもしれないと気づく。さりげないやさしさに心の中で感謝する。
話しながら、麺がゆであがり、汁なし麺が出てくる!
これは、チョウおじさんの幼いころは、村のお母さんたちが集まって一緒に作って、村の人たちに分け合っていたという。手打ちだからこそ、均等ではない麺はこしが強い。しっかり小麦の味がする。これは中国の福建省から渡ってきた祖先の影響らしい。
話を聞きながら、チョウおじさんを見習って、ニンニクと唐辛子を加え麺を混ぜ、すする!一気に麺の小麦の風味と、濃厚なたれとニンニクが口に広がり、思わず「うまっ!」とよっちゃんと顔を見合わせる。あっという間に食べ、よっちゃんが食べきれなかった分も食べてしまう。店内の小さいテレビでは台湾の甘い恋愛ドラマが流れており、時折三人とも静かになりテレビをみながら麺をすする。
テレビをみながら、「台湾に来る前、私も好きな台湾の俳優の恋愛ドラマを100話近くみたんだよね」と私が話すと、意外なことにチョウおじさんが「僕もだったよ」と話す。
チョウおじさんは馬祖に生まれ、福建州の言葉と馬祖特有の言葉、そして中国語を話す。でも台北で16から働き始めてからは、台湾語と呼ばれる閩南語が仕事場では話される。だからドラマを見て、覚えたのだと話す。ドラマは言葉を学ぶのにもいいよね!と三人で盛り上がり、
店を出た頃はすでに1時過ぎ。街の大きなお寺をチョウおじさんについてお参りし、小学校の隣の防空壕も見学する。
そうして街を歩いていたら、家の中からおばあさんがチョウおじさんに話しかける。知り合いらしく馬祖の言葉で何かを交わしている。よっちゃんは台湾語もできるから、なんとなく馬祖の言葉も分かるらしく、おばあさんがチョウおじさんの子供たちの話を聞いて、チョウおじさんが息子も娘も大学を卒業して、働いていると話しているよ、と私に通訳してくれる。チョウおじさんのお母さんは台湾本島にいるらしい。
高校を卒業するなり、仕事をはじめ、一人で子供たちを育て上げ、大学に二人も行かせたチョウおじさんは今一人でこの島に住んでいる。よっちゃんと、チョウおじさんはすごいねとおばあさんと話しているチョウおじさんを見ながら話す。「今は自由な生活だよ!」と私たちに話すチョウおじさんの過去はひとしきり働き、苦労した過去が垣間見える。
おばあさんを後にし、再びチョウおじさんの車に乗る。降りると、そこは昔軍の建物だったらしき二階建ての建物が。上がると、前面に広がる海!
また車に乗り込む。チョウおじさんが「冷房あるところに行こう!!」と話す。でもやってきたところにあるのは防空壕の入口だけ。とにかくチョウおじさんの後をついてそこに入る。すると一気に涼しい空気が体を包み込む!岩場を削り作られた防空壕は天然の冷房だったのだ。
奥に進むと、見張らせる開放的な所に出る。大砲の隣に腰をかけ、海の水平線を眺めながら少し涼む。そしてその後外に出てさらに岬の方に進む。岬の道の一部はガラスの破片が埋め込まれている土が。おじさんが気をつけてを声を書けながら、これらは中国の人がひっそり忍び込んだ時阻むためにこういうガラスを埋め込んだのと話す。
岬には、魚の罠がかけられているのが波の合間から見える。「これも、中国の密航船が夜やってきて罠を張るんだ」とチョウおじさんが話す。「海洋警察は面倒ごとは嫌だから見て見ぬふりをするんだ」と続けて仕方なさそうにこぼす。この罠の種類は台湾では生態を壊すから禁止しているらしく、チョウおじさんも魚たちに及ぼす影響を憂いながらも、中国の人は生活のために、お金のためにこうするしかないんじゃないか、と話す。最後に、罠に何かかかっていたら時々もらっちゃうんだけどね、といたずらそうに笑う。
私とよっちゃんは法でも解きほどけない複雑な台湾と中国の関係の現状を見たようで、黙って考え込んでしまう。「ほら!帰るぞ!」という声で我に返り、またもと来た道をたどる。それから今度は美しい花崗岩を積んで建てられる馬祖の伝統的な建築方式が村ごと守られている芹壁へ行く。
一日中観光し、疲れた体を少し休めるためチョウおじさんおすすめのカフェに入り、マンゴースムージーを三つ頼み、海が見える二階で飲む。
よっちゃんとチョウおじさんが話し込み、私は必死に聞こうとするが、眠気に負けれず、目を開けたり開いたりしていたら、案の定チョウおじさんに見つかり、笑われる。寝ていいよと言われるが、やっぱり必死に聞こうと頑張る。
ゆったりと日が沈み始める。
カフェを出たころには疲れもほどけ、少し石畳の家の街を探検する。
海が夕焼けの色に変わる。街に明かりが灯り始める。
再び車に乗り、夜ご飯を食べに、中心街に戻る。
すでに七時だったこともあり、大通りの店はほとんど閉まっていたけれど、少し組み入ったところに焼き串屋さんの居酒屋が!
「今晩は僕のおごりだ!好きなの頼みな!」と、チョウおじさんが大判振る舞いをしてくれ、魚や焼き串を肴に、台湾ビールを飲みながら話す。自然に話すことは私とよっちゃんの人生相談になる。よっちゃんは、就職でどこがいいかまだ決めきれずにいると話す。
「人生は何事も選択だよ」とチョウおじさんが話す。
AかB、どちらが自分が大切にしているものの方向に導いてくれるのか、1つの選択が全然違う景色を私たちに見せてくれる。だから、1つ1つの選択は重要なんだよと話しながら、でも人生はずっと調節していくものだから、とチョウおじさんは続ける。台湾本島にいたときは子供を育て上げるためにとにかく稼ぐためにいろんな仕事必死に転々とし、稼ぐために働いて、子供たちを育てた後は、馬祖に一人帰る事にし、馬祖に来てからもツアーガイドや、工場や、好きな漁からお金を稼ぐ事ができるようになると、漁と今の仕事を兼職する生活へと少しずつ生活を変えていったチョウおじさんの口からだと聞いたことがある言葉も、重みが増して、私も自分自身の事を振り返る。
高校時代、一つの選択が人生を決めてしまいそうで、進路を決めるのが怖かったこと。その後、とにかく進んでみなという親の一押しで中国語の語学学校に通い始めた高校三年のこと。そしてよっちゃんと同じ国際関係学しか受けなかったら、不合格の通知にくじけそうであきらめかけたけど、次の月もう一回チャンスがあると知り、三つの大学の合計11学科に受験し、いくつか受かり、その中から今の社会学に行く事に決めたこと。大学1年目、自分がしたい国際協力の形が分からず、何がしたいか分からず、夏休みとにかくアフリカ東南部のマラウイに実習に行くことに決めたこと。そして今年団体を立ち上げ、ビビりながらも再びマラウイに一人プロジェクトのため戻る事に決めたこと。
こうした、一つずつの選択は、時に思いがけない結果を時にもたらせながら、それでもなんだか自分が漠然と想像するその先へと道しるべを付けていっているかのように感じる。
でも、おじさんは続ける。社会の競争を知る事も大事だと。社会の中にいるからには、その流れを上手く読んで、理想と組み合わせていかないといけないと。
まだ、大学と家族に守られている私には、なんだかまだ実感はわかない。でもよっちゃんが真剣に聞く姿を見ながら、自分も2年後はどう思うのだろうと想像してみる。
考えていたらチョウおじさんの電話が鳴る。バーで昨日の常連客の兄さんが粽を持って待ってるんだけどという電話だったらしい!
そろそろお開きにしよう。
バーの常連客のもてなし、夜の島を爆走
それから民宿の隣のバーに行く。
民宿に着くと、確かにカウンターに丁寧にお皿に粽が2つ載せられ、フォークがおかれ、兄さんがもう一人昨日あった兄さんと話していた。私たちが来たのを見ると、ほら食べてとしぐさする。
チョウおじさんにまず、別れを、と思い振り向くとおじさんは「明日はいつの便か」、送ってあげるから時間を教えてという。私たちは、自分たちで歩いて港まで行くから平気だよと伝えるけれど、「いいから」とおじさんに言われ、朝7時半の便に乗ると話す。すると、「早いな!やっぱり、飛行機にしてもう少しここを楽しめば?なんならもう何泊かしていけば?」と話す。
名残惜しんでくれるチョウおじさんの言葉に心は動かされるけれど、やっぱり来週よっちゃんは日本に、私はマラウイに行かないといけないから泣く泣く朝離れないと行けないと告げる。おじさんはならば朝ごはん一緒に食べようと、明日朝6時50分に待ち合わせることに。お休みと言っておじさんが帰ってから、粽に向き直る!
兄さんたちがおもむろに粽の外側の葉っぱを剥き、一口目を食べる私たちを見る。
口に入れた瞬間広がるのは、もち米の甘い香りと、醤油と出汁の味!噛むと、モチモチとお米がして、おいしくて、「おいしい~~!!!!!」と飲み込む前に思わず言ってしまう。それを見て、兄さんたちが嬉しそうに笑う。「ほら、作ってくれたおふくろに写真を見せなきゃな」と、私たちが食べる写真を撮り始め、客のドリンクを作るのに忙しそうな店長も寄ってきて、「俺のまで食べんなよ!」と輪が一層にぎやかになる。
今回頼んだお酒は秘密のお酒。
コップにはお花が添えてある。
また、「かわいい~!!」と私たちが騒ぐ。すでに来る前に4本ビールを飲んでいたからすでにテンションは高い!そしてしばらく、私とよっちゃんでこの旅を振り返る。兄さんたちはその横で勝手にバーのお水を出してきて飲んだり、スマホをいじっている。
よっちゃんは酔うと、眠くなるので、ほら付き合ってよ!と言いながら私はお酒を飲む。
兄さんたちが頼んでくれた枝豆と、店長がピーナッツとこの島特有のスナック菓子をサービスをしてくれて、また話始める。
台湾の男子はどうかとか、付き合ったことはあるかないかとか、店長と兄さんたちが聞いてくる。よっちゃんと顔を見合わせる。そして、「台湾の男子いいと思うけど、付き合ったことないよ!というか、人生で付き合ったことないから日本と台湾比べさえできないよ」と爆笑しながら話す。「まじかー!!」と本気で言われるのを「だからよっちゃんに聞いて!」ととりあえずよっちゃに振る。
その後、「いやー語学学校時代から台湾人と夜衝(夜いきなりどっか山とか海とかバイクで行く事)したいって思ってたのに今までないんだよ!」と恨めしく言う。すると、兄さんたち、 まさかの「んじゃ、よし行こうか!夜衝!」と言い始める。「まじ?え、本当に?」と私が言うのも気にせず、今度は店長が、「じゃ、僕が店閉めるまで待てよな」と言い始める。
すでによっちゃんは酔って眠そうだし、「いやいや行ける?」と聞くと、よっちゃんが「レナが行きたかったんだもん、行こう」と明らかに眠そうにいう。「いや、行きたいけど、行きたいけど、よっちゃんこれは無理でしょ!」と兄さんに向くと、まあ車だからとなんだか本当に連れて行ってくれる事に!
そんな私たちに、店長がさらに瓶ビールを開けてくれる。店長も飲み始めるし、すでに出来上がってるよっちゃんはそれでもビールを飲むから、また笑いながら乾杯する。
最後のお客さんがいなくなってから、店長が閉店の準備をし、私たちは外で待つ。兄さんが車をごそごそしたかと思ったら「いや、汚いからな?」と言いながら私たちに言う。
車に乗り込み、それから島一周しようと、兄さんが運転する。
一本道をすごいスピードで走る。夜景がきれいで、昼間チョウおじさんが連れて行ってくれた芹壁も、また夜は全然違う雰囲気、それを写真に納める。
そして海を見ながら、やってきたのは島の反対側。これまたチョウおじさんが連れて行ってくれた岬であった。防空豪を海のゴキブリと呼ばれる虫を怖がるよっちゃんを笑いながら歩く。
防空壕の見張り台から海を見ると、先端が波が当たるたびに青く淡く光るのが見える。「蘭眼淚だ!」と思わず二人して身を乗り出してみる。波の白いさざ波が、青く光って見えるのだ。
よっちゃんもだんだん酔いが覚めたのか、一緒に真剣に見ながら、時折ゆらっと波に光る青い光の集合に歓声をあげる。兄さんは静かに海を眺め、店長は「名前をつけるぞー!レナの涙だ~!」明日帰るからさみしくなるねと店長はやけに熱い。それに爆笑。
すると遠くから船がやってくる。中国の船だと兄さんがいう。寄らせないために光らせようと言ってヘッドライトのあたりをそっちに向けると、船のライトもこっちを探る。「怖い、怖い、やめよ!やめよ!」とよっちゃんがいう。私も緊張する。でも二人はお構いなし。しばらくライトをかざしても変わらず岬に近づく船。「遊びは、おしまい」とそこでやっと兄さんはやめる。
二人は私たちの足もとまで気にかけながら、私たちは息を切らして階段を登り切って車に戻る。「楽しかった~!」と車に乗り込み、こんどは少しゆったり車窓の外に広がる黒い海を眺める。私の隣の店長は消防士とバー二つを兼業していて、台北に一度消防士として空港に務めたことがあるけれど、やっぱりここがいいから帰ってきたのだと話す。兄さんはこの島で兵役をしてから、ずっとここに住み、今は車の修理屋さんとバイクの貸し出しをしているという。この島はこの人たちにとってそれぞれ違う意味があり、まだ私にはわかりきれていないだろう島の魅力に惹かれているんだろうかと感じる。
宿に帰るかと思いきや、車はバーも宿も通り越し、こんどは反対側の港に行く。車から兄さんがプラスチックのバケツに紐がついたものを出してくる。私たちは二人について港の堤防に行く。そこに兄さんが海水を汲んだバケツを投げ入れる!!
パッ!!!しぶきが青く舞い上がる!
花火みたいにしぶきが飛び散り、光る!
思わず「わ~~!!花火みたい!」と歓声をあげてしまう。そんな私たちを、「本当は夜ここに居ちゃだめだから」と静かにと合図する。兄さんがまたバケツを引き上げ、また投げ入れてくれる。今回は忠告もあり、少し静かめによっちゃんと歓声をあげる。
「私もやりたい!」というと、兄さんが水を汲んでくれて私も投げる。距離は伸びず、ピシャッという鋭い音とともに一斉に青くその周辺が光る。今度はよっちゃんも、私と兄さんに支えられながら投げてみる。また青く光る。
今度は兄さんが汲んだ海水を階段沿いに流す。海水は流れ落ちながら、青い光も一つ一つ流れ落ちていく。階段の下の方へとおいでと呼ぶ兄さんについて私たちも下に行くと階段の波打ち際で青い光が打たれるたび一つ一つ光る。よっちゃんが「星空みたい」とささやく。流れ星のようにその一つ一つの光がまた海に帰っていく。さざ波の度に新しい光が光り、それを飽きもせず眺める。
兄さんたちはと、後ろを見ると、私たちの後ろに座って待ってくれている。二人にありがとうと伝え、またみんなで車に乗り込む。
バーと宿のその石畳の建物まで戻って、そこで二人にまた感謝を伝え、手を振って見送る。兄さんは勢いよくブーン!と車をぶっ飛ばし、私とよっちゃんは「あれはカッコつけだね」と笑う。店長もバイクで手を振りながら帰っていく。
島の人はかっこいいね、とよっちゃんとしみじみ話しながら、私たちも部屋に戻る。シャワーを浴びて、ウーロン茶を淹れて二人でゆっくり飲み、「今回は全く二人で話す暇もなかったね」と苦笑する。「でも、本当に楽しかったね!」と続ける。
よっちゃんの就職の事もろくに聞いていなかったから、最後の晩だから「どうなの?」と聞くとよっちゃんは話してくれたけれど、眠くて相槌もろくに打てず、そのままうとうとと眠りにつく。
よっちゃんの人を一人ひとり尊重するやさしさと、気配りと、それでいてとてもオープンに人と接する明るさがあってこそ、私はこの島でこうしてみんなに会えたんだろうなと思う。もちろん、私たち二人は気遣わなくていい関係であるから、新しい出会いを二人でして行けるのもあるのだろうけれど!
また帰る約束、すぐ会うからね
島の人たちのやさしさに包み込まれる三日間。感謝してもしきれない。だから、よっちゃんとこれは少しずつ返していこうねと話す。そして私の二年後の卒業旅行はここで過ごそうと二人で決める。
台湾の本島の港に帰ってくる。常連客の兄さんからも、店長からも、チョウおじさんからも私とよっちゃんに「帰ってくるんだよ!また会おう」とラインが港に着くなりくる。この馬祖に行ってから心がいっぱいに満たされた。いつか自分もこうやって人をもてなせるようになれたらいいな、こんな風に自分の大好きな場所を出会った人に紹介できるようになりたいと心底思う。でも、これはみんなには恥ずかしくて言えないけれど!