台湾の離島、馬祖のチョウおじさんが案内する島一周

台湾旅行

馬祖、それは台湾の北部の最先端である基隆から250キロ離れたところの島々である。エメラルドグリーンの海に、青い空がどこまでも広がる!そして見渡せば、小さな島がポツンポツンとあり、その奥には中国の大陸がのんびりと広がっている。そこに沈む太陽をよっちゃんと二人で風を全身に受けながら眺める。

まだ私が高校3年生だった時、漠然と日本を出て海外の大学に進学したいと思っていた時に出会ったのが台湾大学に通う大学一年生のよっちゃんだった。難民支援をする団体をすでに立ち上げていたよっちゃんを見て、「こんな人になりたい!」と思い、私は台湾大学に来た。

あっという間に三年が過ぎ、私は台湾大学の2年生になり、よっちゃんは今年6月、1年間のトルコ留学から帰ってきてそのまま大学を卒業する。1年前泣く泣く彼女をトルコに見送ってから今回2人で会うのは本当に久しぶり。この馬祖に来たのは、そんなよっちゃんの卒業旅行なのだ。

2人でゆっくり1年間の事を語り合う旅行、、、それはまさかの出会いによってこの馬祖の素敵な人たちに囲まれ、なんだか超特急に日々がすぎてしまう事に!

今回はそんな温かい馬祖の人々との話をしようと思う。

最初の事の始まりは、船の中。

チョウおじさん

よっちゃんがトルコから帰ってきたのは2週間前!私たちは学生なので、とにかく安く行ける船で馬祖に行く事にし、まず寮で待ち合わせ、久しぶりの再会に感動する暇もなく、夜10時半に出航する船に乗るため港へのバスに乗る。バスを乗る事1時間、港に無事つき、出港1時間前だったから夜ご飯でも買おうとしたが、なんと電話がかかってくる。

「どこにいますか?」

まさかの船にもう乗らないといけないらしく、電話がかかってきたのだ!そんな訳で急いで港に行き、バタバタと船に乗り込む。

チケットの席番号を頼りに、自分たちの席を探していると、馬祖が地元らしきおじさんが日本語をずっと話している私たちを心配してか、「大丈夫?チケット見してみ?」と言い、席まで案内してくれる。それからどこから来たのかなど話し、お礼を言う。おじさんはどうやら隣の席らしい。

席といっても、ベッドがある!

私たちは船のデッキに出て話しまくり、再びベットに戻ったのは夜中3時。今回は旅の事前リサーチを忙しくて全くしなかったから、船の上でしようと思ったらまさかのWi-Fiが全く使えない事を発見。諦め、とりあえず床につく!次に起きたのは島に着く十分前の6時半!荷物をバタバタと整えていたら昨日のおじさんが再び話しかけてきた。

「どこ行くの?交通はどうするのー?」

馬祖に2泊3日で来ていて、南竿という島に1日、北竿という島に1日いると伝えて、「あ、自転車で回ろうと思ってる!」とよっちゃんが話すと、おじさんが一瞬言葉を失う。

「いやいや、無理無理!自転車はやめな。とにかくバイクかタクシーがいいよ。」と慌てて言う。

「いや、私たち免許持ってないからバイクは無理だから自転車借りれないかなと思ってるんだけど」

と言うと、おじさんは信じられないというように首を何度か捻り、「とにかく、自転車は借りられないし、バスとタクシーがいいよ」、と勧めてくれ、私たちも「OK!わかった!」という。

話しながら船を降りていたら、これからどうするのか、朝ごはんはどうするのか聞かれる。全くリサーチをしていなかったので、「どこかで食べながらどこ行くか決めるつもり!」と言うと、一緒に朝ごはんに連れていってくれる事に。

港につき、おじさんにくっついて車を待つ。やってきたおじさんの知り合いらしきタクシーに乗りあれよあれよと市場に着く。颯爽と歩くおじさんの後を追い、市場の2階へ行くと、人混みが!

おじさんがおすすめする牡蠣の揚げたものに並んでいる間おじさんはもう一軒で台湾式ドーナッツを買い、さらにもう一軒で麺を頼んでいて席を取ってくれる。

牡蠣は次々におばあちゃんに揚げられ、私たちも牡蠣と卵と春雨が入った揚げ物を手におじさんの麺屋さんに行く。すでにテーブルには3つのお椀が!お金を出そうとすると、いや奢りだからとおじさんは受け取らず、とにかく食べてと勧めてくれる。

私たちは、お互い申し訳ないっと2人で目を合わせるがとにかく食べよう!とスープを飲む。淡いスープは魚介の出汁が効いていて、一口食べたら止まらない!お互い「美味しい、美味しい!」と日本語と中国語で言いながら食べる横でおじさんが解説してくれる。

おじさんによると、これは「鼎邊糊」というらしく、鍋にサラサラとした生地を流し込み、縁にくっついた生地を鍋から剥がし麺のようになったものを、魚介のスープに入れ、そこにさらに魚のすりみの団子をトッピングしたものらしい。地元では鉄板らしく、朝7時ごろに来なければすぐに売り切れてしまうらしい。それも納得!本当にはじめて食べる味。

食べながら、おじさんが話す。おじさんはここ媽祖のうち私たちが明日行く北竿で生まれ育ち、それから12歳で台湾本島に家族と移住して、5年前に島に帰ってきたのだという。島ではツアーガイドをしたり、釣りをしたりしてゆっくり昔の友人たちと暮らしているのだそう。微笑みながら、時折スマホで釣った魚の画像を私たちに見せながら話す口調から、この島が大好きで、故郷として大事にしている事が伝わってくる。

とにかく、おじさんに少しでもお礼をと、自分たちのおやつに持ってきた日本のクッキーとパイナップルケーキを渡す。おじさんは、パイナップルケーキはいつも友人からもらうから君たちで食べなといい、クッキーだけ受け取る。

私たちはそれからおじさんについて市場を出る。おじさんは9時に船に乗らないといけないからそれまで暇だからと、それから有名な公園に連れて行ってくれ、さらに歩いて酒蔵の洞窟に案内してくれる。

8時半からしか入れないよ!と言われるがおじさんはニタッと笑い、静かにと合図して私たちを酒蔵の中に連れて行ってくれる。

馬祖の高梁!

おじさんはそこから船に乗らないといけないと、私たちのためにタクシー呼び、ノープランだった私たちにひとしきり見た方がいいところと周る順番を教えて見送ってくれる。そして、

「北竿に着いたら、僕に連絡して!僕8時から仕事だから、その前は案内するよ!」

と言い連絡先を交換し、別れる。

そう。この人がチョウさん。私たちの旅をまさかの方向に引っ張ってくれる事になる中心人物だった。

南竿を探検

まず、北海坑道へ!掘られたところを下がっていくと、水路があり、私たちは手漕ぎボートそこを探検。

戦争の跡を見て、感じて歩く。

私たちはそれから可愛い街に行き、歩き、、、

さらに馬祖という神様の像を観に行く!しかし、その時すでにお昼12時。おじさんから「お店は気まぐれに閉まったり開いたりするから、1時前には食べた方がいい」という忠告を思い出しとりあえず神様の像の近くの街でタクシーの運転手が勧めるレストランに入る。

島、ならば海鮮!!!

海鮮の麺とムール貝を食べる!

美味しくて止まらないっ!モリモリ食べた後、神様の像のところへ山を登っていく。

疲れたら、海を見渡し、また歩く。そうしてついて見上げると、この島を守っているように立つ馬祖が。

海が荒れず、暴風が吹かぬよう見守るというその神様は本当に静かに立っている。

静かに私たちも礼をし、それから今度はこれまたチョウさんに勧められたカフェへ。ここは、予約必須らしい。険しい道を下っていくと、そのカフェがそこに!2階は壁2面どちらも青い海。

本を片手に静かに2人で飲んでいる間にわたしは一眠り。そしていよいよ北竿に行く船に乗るため離れる。

北竿へ!チョウおじさんの

南竿から北竿まではたった20分。宿に行き、荷物を下ろし、ノープランの私たちはさすがに何か調べようとし始めた時、チョウさんから電話が!そして、私たちが全く交通手段を持ち合わせてない事を知っているから心配してくれたのか、なんと案内してくれる事に。

5分後、チョウさんのバンが宿の前に到着。わぁー!と言いながら駆け寄り、本当にありがとうって伝えながら車に乗り込む。チョウさんはそれから高台に行こうと、車を運転。私たち2人はあまりに急な坂を勢いよく走っていくので、後ろでワーワー騒ぎながら、チョウさんはそれを笑いながら運転する。

「自転車、これは無理でしょ?」と聞かれ、2人で頷く。この炎天下の中、この坂、、、絶対に無理だ、、、。なぜチョウさんが船であんなに驚いたのかを身をもって知る。

連れてきてくれたのは一つの高台。海が見えて、島が見えて、そして中国が見える。中国の風車まで見えるのだから、本当に近いのだ。

綺麗で、少しなんだかホッとする。自然が近くて、台北と全く違う雰囲気に包まれ、なんだか肩の力が抜けていく。

しかし、それでも炎天下!釣りに連れて行こうかとおじさんが誘ってくれ、そのまま釣りに行く事に。

岬にはすでに何人もの地元の人が釣りをしていて、小魚を次々釣り上げている。私たちはおじさんについていき、おじさんに教えられながら釣ってみる。私は1回目、釣り糸がへんな所に引っかかり、2回目もまた引っかかり、あまりのへなちょこに自分でも嫌になったが、チョウさんがもう一回やってみなと言ってくれ、それから一度に2匹も魚を釣り上げる!

よっちゃんも釣り上げて、私たちはそれから夕陽をのんびり眺めながら、おじさんたちが釣りをする隣で話す。

6時半ぴったしになり、チョウさんの携帯のアラームが鳴る。

「じゃ、少し食べよっか!」

というチョウさんを私たちははてなを頭に浮かべながらとりあえず歩いて着いていく。そして、チョウさんの親戚のおばさんの家に案内される!

いいのかな?遠慮すべきじゃないか、と迷っている私たちをチョウさんが「はいはい、上がって」と言い、おばさんに私たちを紹介する。おばさんは頷きながら台湾語でよっちゃんと話し、お茶のペットボトルを私たちに渡して、早く食べなと机を指す。

そこには、もうすでに揚げてある小魚が山盛り!

よっちゃんと歓喜の声をあげていると、「ほらほら、手を洗って!揚げたてのほうが美味しいけど、これは君たちを迎えにいく前に釣った魚でおばさんが作っておいてくれたんだ」とチョウさんがいう。

おばさんに感謝しながら、言われた通り手を洗い、遠慮なく食べる。小魚は新鮮だから臭みが一切なく、ふわふわの身!どんどん食べな、と言われ、食べながらチョウさんが小魚の骨の取り方を教えてくれる。

落ち着いてきたら、「後は持って帰りな」と、残りをパックに入れてくれ、「じゃ、夜ご飯食べに行こう!」と車に向かって歩いていく。さすがに、これ以上迷惑をかけるわけにはいかないと、仕事があるのだから、私たちの事は大丈夫と伝えるが、まだ仕事じゃないから平気だよと、結局夜ご飯まで連れて行ってもらう。

ここに来たら魚麺を食べなきゃね、と言い町の魚麺屋さんに連れて行ってくれる。店の前ではおばさんが麺を干している。

おじさんは顔見知りなのか親しげにお店の人たちと話しながら、注文してくれる。

魚のすり身と粉を合わせて作った麺は確かに魚の香りがし、美味しい!さらに、地元の人が好きだという揚げたバージョンもパリパリとつまみ食べる。

チョウさんは自分にも娘と息子がいて、その子達を1人で育てて、今はこうしてのんびり暮らしているんだと話す。

よっちゃんはちょうど今年から就職する。内定は2社からすでにもらっているけれどまだ決めきれていない事を話し、私は3年前よっちゃんを追って台湾の大学に来たのだと話す。

ちょうどそこに中年のおばさんと娘が来る。観光客らしく、藍眼淚という青く光る微生物を観に来たのだと話すその人に、最近は少ないけどここでは見えるよと教えるチョウさん。娘は不機嫌そうに口をへの字にして目を合わせようとさえしない。

彼らが去るのを見送ると、チョウさんは藍眼淚しか目になくて、それが少しは見えるのに、たくさん見えないからとがっかりして帰る観光客の人が残念だと言いながら頭を振る。他にも色々見れるところはあるのにと。

それから話は馬祖の宗教の事に。台湾では神様に聞くために二つの陰と陽の形をした赤いものを投げるのだが、ダメだというサインが出たら質問を変えてまた聞けるのだ。投げても投げてもダメで、それでも質問を聞き続けるのはある意味自分が何を重要に思っているか自分自身に問う過程でもあり、それは神様じゃなくて自分の心を聞く事なんだとチョウさんは話す。馬祖はでも、違う方法で神様と会話をするんだと続けて話す。紙に神様に聞きたいことを書き、それを神輿につけて聞くのだ。台湾では神様は普通の文字は読めないから神職の人が間に入り、神様と会話するけれど、ここでは直接話すんだよと言う。

そんな話をしているうちに麺を食べ終える。

「じゃ、藍眼淚を見に行こうか!」その一言で私たちは再び車に乗り込み、砂浜に行く。

藍眼淚、淡く光る美しい微生物

この時期はすでに藍眼淚の時期ではないけれど、工夫したら見れるんだよと言う。確かに観光のブログに載っているような一面青い光が海を泳ぐ、というような光景はそこにはない。

チョウさんの後を私たちは、砂浜に留めてある船の近くまで細かい砂を足でサラサラと感じながら行く。船の近くで、海の小波が少し船を包んでいるところにしゃがみ、船の影で暗くなっている水面をチョウさんが手でかき混ぜる。

すると、綺麗に青く小さな光がたくさん淡く光る!

私たちも身を乗り出してかき混ぜると、ホタルのような光が水の中で青く揺らぐ。そして、また消える。楽しくて、それをいつまでも繰り返していると、チョウさんが海藻をそこら辺から拾ってきて、それを使って海を混ぜる。するともっと多くの光が揺らぐ。今度は私もよっちゃんも交代で海藻を使ってみる。私たちがはしゃぐのを見ながら、チョウさんは少し奥まで行ってみようと、もう少し海に近づいて、水面を浮くプラスチックの筏に飛び乗る。私たちもそれに続く。

そこをかき混ぜると青い光がさっきのところよりもさらに光って見える。

「こっちの方がくらいから、対照的によく光ってるのが見えるんだよ」

とチョウさんが教えてくれる。

藍眼淚は刺激されると、光る微生物で、4月と5月が繁殖期らしい。波などに刺激され光って、刺激され続けると徐々に光は弱まり、また一度休憩すると光出すのだという。

私の手にくっついて光る藍眼淚を見ながら不思議な気持ちになる。普段は目に見えない微生物が、こうして光っているから見えるのが不思議。でも、チョウさんに会わなければ、こうやって藍眼淚を見れることさえ知らずに砂浜を横たわって終わりだったのだろうと思う。

バーの常連客に囲まれて、再び感じる島の温かさ

帰りは宿まで送ってもらう。私たちの宿の隣にはできてしばらくたったというバーがあり、チョウさんはそこに挨拶してから帰るという。荷物を宿に置き、私たちもチョウさんを最後まで見送ろうとバーに行く。すると、早速話し込んでいるチョウさんを見つける。話を遮ってしまうだろうとバーに入るのを躊躇している私たちをチョウさんは招き入れ、私たちをバーの店長と常連客に紹介してくれる。

なんとなく、私たちも座り、お酒を注文する。

馬祖特性の高梁のカクテル、その名も馬祖の花「彼岸花」

すると、店長と常連客らしき2人の人たちが「藍眼淚は見れたか」「どこを巡ったのか」とか聞いて、そんなこんなでお酒も進み、日本の大阪に行くというここに住んでもう長い兄さんにおすすめのスポットを教えたりと、溶け込んでいく。私たち2人が楽しそうに話すのを見て、チョウさんは、「明日も仕事までは暇だから案内してあげるから、また明日ねー」と先に帰る。

私たちは恐縮しながら、「本当、ありがとう!でも忙しかったら全然いいから!」と伝えながらバイバイする。

常連の1人が、「チョウさんいい人だよねー普段一人暮らしだから2人がいてくれるのも楽しいんだと思うから、遠慮しなくても大丈夫だよ」と言う。確かに娘のようにもてなしてくれるチョウさんはいつも嬉しそうにはしゃぐ私たちを優しく見守る。

店長は時折話に加わりながら、ピーナッツを私たちに「はい、サービス」と置いてくれる。

私たちはその常連客2人と店長の輪に入れてもらい、大阪に行くという兄さんが今度は逆に彼の故郷の台南の美味しいところを教え始める。そして、先週はちょうど端午節という祝日で、台湾はちまきを食べるのだけど、その兄さんのお母さんがちまきを送ってくれたらしいという話になり、なんと

「食べてみる?美味しいんだよ」と言ってくれる。

「えー!食べたい!」と私たちが言うと、店長と常連客のもう1人の兄さんも「俺もー、お前2つだけ持ってきたら許さないからな」と脅される。

これがいつもの島の光景の一部なんだろうなと仲良さげに冗談を言う彼らを見ながら思う。私たちはチョウさんのおかげで、なんだかその一部に入らせてもらったよう。普段の旅行にはない、人の出会いとあたたかさがまた新しい出会いに繋がっていく不思議な縁の連鎖はきっとこの小さな北竿の人と人との繋がりならではなのだろう。

バーは閉店時間を迎え、「はい、閉めるよ閉めるよー君たち出てー」としっかり店長に追い払われながら、「明日じゃチマキ食べにおいで」と言いみんなと別れる。

真夜中、よっちゃんと二人で音を立てぬよう静かに部屋に帰る。1年間私たちは会っていなかったからお互いの事を話すのかと思いきや、寝転がるや否「今日、本当に楽しかったね。」しか出てこない。結局疲れていたのとお酒を飲んでいたのとで、すぐに二人とも眠り込んでしまった。明日はチョウおじさんが迎えに来る9時までぐっすり寝る事にする。よっちゃんといるといつもなぜか私の世界が広がる。

チョウおじさんが語る馬祖の話は、ではまた明日。

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