前置き
マラウイはアフリカの東部に位置する内陸国。
小さな国で、国土の三割を巨大なマラウイ湖が占める、「アフリカの温かい心 warm heart of Africa」とも呼ばれる。
そんな国に去年大学のプロジェクトで六週間滞在。そこで会った人たちに惹かれ、今回は自分一人で、教育プロジェクトを去年知り合ったマラウイ人の大学生と進めるために帰ってきた!
初インタビュー
今日は、朝から台湾大学の学生記者のインタビューに応える。
メンバー四人組一緒に隣り合って一つのベンチに座って、私のパソコンを目の前において、携帯をマイク代わりにして、インタビューに備える。
私よりもブレッシング、ビクターの方がちゃんと答えを真面目に考えて、メモを取って、インタビューに備えていて、彼らの準備を見て、少し嬉しくなる。でも、どんどん緊張して、「どうしよう、緊張する」と言うと、二人とも「僕たちがいるから平気だよ」と言う。本当に彼らは最高だ!!
台湾のメンバーも準備したメモを私にくれて、マラウイ、台湾と準備万端!!
インタビューは、私が中国語を英語に翻訳しながら、それにメンバー全員回答したい人がどんどん回答していくスタイル。優しい学生記者と、積極的に応えるメンバーに私は全然心配する瞬間等なく、ただ時々自分の意見を付け加える形。「台湾のチームのアナ、ジャスミン、レナがいて、新しい視点を持ってきて、僕らがまた自分たちの強みを生かす」そういう風に堂々と語るブレッシングには私はかなわない。彼のみんなを受け入れて、それを尊重する姿勢、それはなかなか私にはできない時、忘れてしまう時があるから、本当に尊敬する。
インタビューは無事一時間で終わり、私はその後ジューディスファンデーションに行く。メンバーが私に自転車タクシーと交渉してくれていたけれど、途中で、やっぱり、そこにいくなら危ないからバイクに乗らなきゃと、二人で私の左右を囲んでエスコートしてくれる。本当にマラウイ男子は紳士的!!二人とも私に付き合って30分程バイクを探したり、交渉したりしてくれ、そして「着いたら連絡してね」と言う。さすがである。
優しいジュディス基金の創設者が語る、学ぶ事
そうして行くと、創設者のおじさんが温かく迎えてくれる。
おじさんの部屋に通されてから、「実は君が連絡くれてからジェームスに相談したんだよ」と言われる。ドキッとする。私はジェームスを通してこのおじさんを知ったのだが、ジェームスを通り越して、「もっと教育の事を学びたい」とおじさんに言っていたのだ。理屈を通すなら、私はジェームスに付いてもっと学ばないといけないのだと思うのだが、ジェームスと長く関わっているから違う組織がどうやっているのか気になったのだ。
おじさんがジェームスに相談して、私に学ぶ機会を与えようとしてくれたのだと、おじさんの話を聞いて初めて知る。ジェームスの器の大きさにはいつも感謝しかない。そして器の大きい人を見る度、自分の小ささを知るのが落ち。そんな訳で、すでに反省モードに入る。でも肝心なのはその後だった。
団体を立ち上げるのか、何をしたいのか。
「何が学びたいの?」
そう問われて、「教育の事が学びたい」と話すと、「具体的に? 」と聞かれる。そこで、マラウイの退学率の事に関心がある事を話す。
すると三つの学ぶ方法がある、そう話し始める。
- プロジェクトを続け、おじさんが個人的にアドバイザーとなってくれる
- ジューディスファンデーションの下で正式にプログラムをして、プロジェクトの基礎を学ぶ
- ジューディスファンデーションの行っているプロジェクトに携わる
やるなら、正式にちゃんと。
それがおじさんの流儀。
応えられずにいたけれど、ゆっくりプロジェクトを初めてそれを続けたいこと、でも学ぶことがたくさんあることを話す。
おじさんがいう。
「プロジェクトを回すには、資金とキャパシティーが必要。」キャパシティーは能力の事。プロジェクトのABCを知って、どうやってプロジェクトを立ち上げて、どうやってモニタリングして、など等そんな基本の能力は学ばないと分からない。
でも、マネージメント力、お金、プロジェクトの基礎、これらを今の私は持ち合わせていない。資金は尽きてきたし、運営の専門知識もない。
どうしよう。私は何もできない。始めたのが正しかったのか。
もうすでに取り組んでいる団体がいるのに、私たちが競合してどうするというのだろう。私は外国人だから、マラウイの教育の事をそもそも他のマラウイ人よりも知らない、私はマラウイに何ももたらす事ができない。痛い。
運営方法も分からないから、雑だと感じるし、基盤がないまま進んでいるんじゃないか、そもそも団体を立ち上げるなんて、一体なんの意味があるのか。すでに上手く回っている機関に働いた方がよっぽど子どものためになるのではないか。こんなにたくさんの仲間に恵まれて、たくさんコミットしてもらっているのに、私の基盤づくり、リサーチが足りていないから彼らの力を子どもに注ぎ込む事ができていないのではないか、、、。
考えれば考えるほどしんどくて、何でこのTIWACTを始めたのか、それが一番マラウイの教育に必要なのか、疑問が湧いて、頭が真っ白になる。
問題がありすぎて、問題定義もできない。このままだと、ただ解決策もなく吞まれてしまう。そう思って、「少し考える」とおじさんに言う。
多分相当考え煮詰めていたことをおじさんが察したのか、私の言葉をゆっくり待ってくれる。
「とにかく、ご飯食べな」
と言われ、マラウイ特有のシマを食べながらおじさんの話を聞く。
おじさんはコミュニティー開発を専攻し、その後政策を修士で取り、今は政策に携わっているという。おじさんはジューディス基金は子どもの就学を手伝っていると話す。貧困で、食べられない子どもたちは、おなかが空いたまま学校に行く。学校に行っても集中ができない。だから、点数も悪い。時に、家事をしたり、家の経済の柱となっていたり、そうした子どもは学校からだんだん遠のき、進級ができなくなる。進級ができないと、周りの子どもたちが自分よりもどんどん幼くなっていく。さらに学校から遠のく。そして、卒業証書のないまま学校を後にする。そうすると、待っているのは自転車タクシーや、限られた給料の仕事。女の子の場合は、結婚、そして子どもを産み、家庭を始める。そして貧困の輪が続いていく。
おじさんは助成金を頼みに来る1000人以上の学生のうち、100人ほどしか選べないと話す。見せてもらった応募書には、家を見てきたのであろう人のメモが書いてある。「父親が学費をまかなえるから勧めない」、「おばさんが学費を払える可能性あり」など、却下された応募書の山。
国連などの機関は、僕たちのような中小NGO等に資金をくれる事はない。事務所をチェックして、あまりに小さかったり、限られた資源を見ると、資金を提供してくれないんだ。そもそも、彼らは自分たちでやりたいからね。
「資金があったら、僕たちの活動はどこまで広がっていたんだろう、とそう思うよ。」
ため息をつきながら、おじさんが話す。
国連はキラキラした印象だったけれど、こうした中小NGOの草の根で働くNGOともっと上手く連携できたら、おじさんたちの情熱とコミュニティーへの理解を加速させて、もっと多くの子どもたちに手が届くのだろうか。
私の活動は地域でどんな役割を果たせるんだろう。おんなじ事をして、ただ競合相手になるだけなんじゃないか。悪い考えが頭をよぎっては頭の端に積もっていく。
おじさんは、とても優しい。
「学びながら、やっていけばいいんだ。ハイブリッドだ。」
おじさんがそう言う。
大学だけじゃなくて、プロジェクトのイロハを学ぶ。ああ、本当に学びたい。力を養いたい。悔しくて、涙が出そう。チームを解散するなんて、考えられない。
でも、私たちはどこに向かうの?
日本にはたくさんの技術がある。マラウイはまだまだ追いついていない。でも、私にはその技術もわからない。それが日本人ができる事なのではないかもしれないけれど、私はその専門はない。
悶々と悩みの渦にはまる。
おじさんが優しく、とにかく後三週間あるから、田舎に調査とか行く時があったら誘うから、と言ってくれる。ありがたく、うなずく。そしておじさんが町まで送ってくれる。
明るく悩みなんて吹き飛ばすビリトンと冒険家の友人たち
別れた後、疲れていたけれど、なんとなく私は町で店を出しているアーティストビリトンがいるか少し見てみようと立ち寄ってみる事にする。もう、体力も、気力もゼロだけど、なんとなくいつも明るい彼に会ったら、自分も明るくなれるかも、とそう思って行く。
でも、お店に行くと、「今日は午前中にしか来てないよ~」と隣のお店のアーティストたちに言われる。はあ、ことごとく、今日はだめだ。もう、こんな町で外国人が泣いてたら目立って仕方ないけれど、涙が出る。その場で眠れそうなほど疲れたけれど、もはやタクシーに乗る気力もなく家の方向へ歩くことにする。
すると、ビリトンから連絡が。町にいるから迎えに行くと言われ、そのままそこで足を止めて待つ。
足を止めたところの写真を送り、ただぼーっと待つ。そこへ相変わらず明るく、やってくるビリトン。彼に連れられ、彼の最近開けたばかりの店に行く。
そこで、ビリトンが「兄貴」と親しむクローディーが店に来る。クローディーとクローディーの奥さんバイオレットに紹介され、私はバイオレット話始める。とっても気さくで、楽しく話していたら、「じゃ、ビリトンと家に食べにおいで!」と言われる。
「今日!?」驚いて私。
「うん、おいで!」気さくなバイオレット。
「ほんとに?」まだ嬉しいながら驚く私。
ビリトンもうなずいているし、ありがたくついていくことにする。車に乗り込み、話始めてすぐに心がほぐれる。私の暗かった心を吹き飛ばすほどのバイオレットとビリトン、そしてめちゃくちゃ優し気なクローディーに囲まれるのは、初めて会ったと思えないほど安心するのだ。
振り返ると、マラウイでは、私はいつも誰かに囲まれ、守られている気がする。台湾では常に頑張らないとと一人で突っ走る感じだけれど、ここは、常に誰かが私の事を見守ってくれてる感覚。こんなに、家族以外の人に囲まれて、守られているのは初めての体験。
バイオレットが、お茶を用意してくれ、ご飯の用意をし始める。「何か手伝えない?」と聞くと、「お客さんは座ってて!」と言われる。ビリトンとクローディーがマラウイも同じようにみんな気を遣うよねと笑う。用意してくれたお茶菓子と、お茶を飲みながら、クローディーの話を聞く。
彼は、冒険家。ツアーを組んで、お客さんをツアーに連れて行ったり、コミュニティーを巻き込んで地域創生をしてハイクのツアーを組み立てたりする会社を起業して、バイオレットと運営しているのだという(マラウイの旅行に行くならめちゃくちゃおすすめ!クローディーの公式ウェブサイト⇒https://adventureswithcolbymw.com/)。キリマンジャロを死にそうな思いで登った話や、マラウイで中小企業を立ち上げる難しさ、政府が個人企業を優遇しない現実など次々に話される話が面白くて、話に引き込まれる。
バイオレットがそうした間に豪華な料理を作ってくれた!
料理はとってもおいしい!!!バイオレットの手料理はすごい丁寧に作られている。マラウイの家庭料理は本当においしくて癖になる。
食べながら、クローディーがマラウイ最高峰の山に登った時サイクロンがやってきて危うく死にそうになったときのドキュメンタリーの動画を見る。
見終わった後、スイカをかじりながら、ビリトン自身がしている制服の修復のプロジェクト(詳しくはこちら⇒マラウイ:アーティストの彼が夢見る物語)を話す。「子どもたちに何かをするのって最高だよね。その後ベッドに横になって振り返ったときの感覚って最高だよね!れなも分かるでしょ」、と言われて、私も三日前のイベントを思い出して笑っちゃう。そして、ビリトンが私が学校でプロジェクトをしている事を二人に話す。二人は興味深々といった様子で話を聞く。思い切って、二人に「ぜひ、来てほしい!」と話すと、「じゃ次回参加するわ!」とまさかの即答!
バイオレットが「私も子ども大好きなのよ」と話す。
クローディーが続けて、「子どもたちにいろんな世界を見てほしいよね」、とはなし始め、「僕たちはハイクやテントの達人だから、そこにビリトンのアートを組み合わせて、小学生たちを読んだら楽しいよね!全然テントとか寝袋なら提供するし」
ビリトンが「やろうぜ兄貴!」と、盛り上がる。
いろんな人が子どもたちに何かしようと盛り上がっているのは楽しいし、なんか希望が湧く。なんて気さくで、フットワークが軽くて、めっちゃ明るい!
夜十一時も過ぎて、たまらなく眠くて目が重くなってくる。たった五時間前は凹んで仕方がなかったけれど、もう今は今が楽しいしか考えられない。最後はスイカのお土産をもらって寮まで送ってもらう。バイオレットにハグして、また会う約束をする。
静まった家に帰って、部屋のベッドに横になる。
本当は、いろいろ考えようと思っていたけれど、なんかそんな悩みはとりあえず横に置いて、眠りに付く。未熟すぎる私にはもったいないほどの人たちが、私の事を守って、信じてくれている。そう感じながら眠れることが、本当に嬉しい。心が温まるのを感じる。