マラウイ:アーティストの彼が夢見る物語

マラウイ教育プロジェクト

前置き

マラウイはアフリカの東部に位置する内陸国。

小さな国で、国土の三割を巨大なマラウイ湖が占める、「アフリカの温かい心 warm heart of Africa」とも呼ばれる。

そんな国に去年大学のプロジェクトで六週間滞在。そこで会った人たちに惹かれ、今回は自分一人で、教育プロジェクトを去年知り合ったマラウイ人の大学生と進めるために帰ってきた!

絵を通して、マラウイの物語を紡ぐビリトン

去年アノスアフリカという芸術の課外授業をする団体の活動を見学させてもらったとき、今一緒にプロジェクトを始めたジェームス(ジェームスの詳しい話⇒マラウイ:子供たちに開く、24時間無償図書館)だけでなく、このアーティストの彼に出会った。色鮮やかなマラウイの布の端きれをいろんな人から集めて、それを繋ぎ合わせて、作ったつなぎと帽子を着ていたから、声をかけたら、そしたら私の分もオーダーして作ってもらった。

そんな彼に1年ぶりに会う。

待ち合わせたその日、連絡が突然取れなくなって、とりあえず町に出て、彼を見なかったか聞いて、見なかったよという返事にがっかりして、寮に帰る道、後ろから「れな〜!」と呼ばれ振り返ると、相変わらず色鮮やかな布を組み合わせたキャップと、ジージャンを羽織った彼が!

彼の名はビリトン。

ウェルカムバックのハグをして、早速最近どうしていたか話し始める。ビリトンととても仲がいい日本人の院生ミクがついこの前大学院を卒業した、など情報を交換して、とりあえず私の寮の方に行くことに。私はこの前買ったビリトンが作ったツナギを使いすぎてほつれてしまったから、それを直して欲しいと頼んでもいた。

寮に着くと、門番から中に外部の人は入れないと言われ、仕方なく、外の木陰であぐらをかき話しを続ける。

一年前、私は誰を信頼していいのかわからず、警戒心で、あまり彼とも話していなかったけれど、ミクが彼を信頼しているのを見て、私も警戒心を解いた。一度警戒心を解くと、やっと本当にビリトンの事をまっすぐ知ろうと姿勢も変わる。今でも、私は警戒心を限られた人しか解かないが、解かなければ知らないその人の一面がたくさんある事をこういう時に感じる。

ひとしきり最近の事を話したあと、ビリトンが尋ねる。

「日本の宗教のことがしりたい」

話を聞くと、マラウイにはマラウイの伝統的な神話があり、人々はその神々を祀っていたけれど、英国に植民地化されてから、そうした神話はキリスト教に置き換わり、いつの間にかマラウイに元からあった神話や、信仰が蔑ろにされて、どんどん忘れられていっている。

日本の神話には無数の神がいて、私たちは神社も参るし、お寺も参る。無宗教だという人は多いけれど、そうした人たちもお寺や神社は参る。日本は伝統的に、石や、木など周りのものにも神様が宿っていると考えるところがあるかな、と屋久杉の写真を見せながら私なりの解釈を彼に話す。

彼は、興味津々といったように私の話を聞く。「神道ね!ほくもそれは読んだ!」と言って、びっくりさせれたが、彼にとっては宗教は人々が世界を見る方法を理解したいというのと、そうした物語を絵を通して伝えたいという思いがあるのだという。

僕は、そうして周りのものに神様が宿っているという考え方が好きだな。木に神様が宿っていて、空気を僕たちにくれて、そして僕たちはその木を大切にする、そんな関係がいいと思うんだ。一番偉い神様が天にいて、見守っているだけであれば、僕たちがしていることは、他の周りに存在するモノと繋がっていることを感じないじゃない?そうした考え方が、今の人たちの消費社会に結びついていて、人間は好きなようにする。そして神様にどうかよろしくっと神頼みをする。そんな考え方ってなんか違うと思うんだよ。

だから、たくさん本を読んだり、旅行に行って、いろんなものを見るようにしてるんだ、という。そうしてマラウイの物語を、英国に植民地化されたときに失せ始めたマラウイの神話も、絵を通して人々に伝えていきたい。いつもお茶らけているのに、この時は真剣なまなざし。マラウイの人は、普段はお茶らけて見えるけれど、ふとしたときに、深い考えがのぞく。

モーターバイクで二時間、辺境の学校に出張する裁縫師

そうして、実はね、とまた改めて話し始める。

最近、プロジェクトを始めたんだと話す。

彼はもともと裁縫するテイラーなのだが、アノスアフリカで7年間子供たちと触れ合う中で、田舎の学校に行った時、高校生の女の子の制服が破れていて、下着が見えていたことや、生理の汚れが付いたままの服だったり、破れたまま着る生徒がいる状況を見てきて、その子達が恥ずかしさに端っこに隠れるようにしていたのが気になっていたのだという。

そこで、彼と彼の友人は、バイクに乗り、ミシンを持って辺境の学校に行って、新しい制服は買えないけれども、制服をなおすべく、今まで4校の学校、約70人の制服を直したのだと話す。

「資金は全部自分たちの限られたお金でやりくりしてるけれど、こうして何か僕自身に返すことは無い子供たちに何かできた後は、お金はなくても、眠る時とても幸せなんだ。」とさらっと笑顔で言いながら、

「あーなんでトイレ一つ作る工事費用をドナーからもらって、結局九割ポッケにしまっちゃうやつがいるんだろうね!どうやって寝つけるんだろう!」と信じられないというように頭を振りながら話す。

そして二人で笑っちゃう。

お互いやりたいことがあるけれど、限られたお金しかないのは困っちゃうねと。

彼に私のプロジェクトを話すと、絶対その日空けとくよ!まかせろっと力強い返事。近い将来彼のプロジェクトと私たちのプロジェクトが一緒にできたら、と想像を膨らませる。

とにかくたくさん笑って、大声で語り合って、そうしたら日が暮れてきた。

ビリトンが持ってるマラウイの歴史の本を借りる約束をして、お土産のラ王のラーメンの煮方を伝えて、それから別れる。

ビリトン作

近い将来、同じバスに彼と彼の友人のテイラーが乗って、そこに私たち大学生たちが本をいくらか積んで乗り込んで、田舎の学校に行く。そして子供たちが制服が修復されるのを待つ間、大学生たちが遊んだり、本を読んだり、彼ら自身がどうやって育ってきたか物語を話したりする。そうして子供たちは縫い合わせられた服を着て、「あんなお兄さん、お姉さんいいな」「本もう少し読もうかな」なんて思いながら帰宅して行ったら、その子たちの未来の可能性を少し広げられたりできるのかな。

きっとそんな未来は近い!彼と会って、そんな気がさらにしてくる。

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